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2018.03.01

世界に羽ばたく「じゆう劇場」

鳥の劇場は、福祉の現場にも出向いてアウトリーチ活動を行っています。聾学校の生徒たちは「鳥の演劇祭」で作品を発表し、劇場のプロデュースで2013年8月に立ち上がった「じゆう劇場」は、鳥取を飛び出してフランス公演も成功させました。

演劇ワークショップを出前で行う鳥の劇場のアウトリーチ活動。その中で出会った鳥取聾学校の中学部の生徒たちは、指導を受けながら稽古を続け、2013年の「鳥の演劇祭6」で初めて舞台に立ちました。

翌年の「鳥の演劇祭7」には高等部も参加し、山本おさむ原作の漫画「わが指のオーケストラ」や、手話が禁止されていた時代の聾者の体験談、生徒たちの手話への思いを題材にしたオリジナル作品「AKASHI~証~」を上演しました。

3年連続の出演となった2015年の「鳥の演劇祭8」では、同じく山本おさむ原作の漫画「遥かなる甲子園」を中学部・高等部の生徒9人が演じ、周囲の人々の支えや聴こえない仲間同士の絆をテーマに、甲子園への夢をあきらめない生徒たちの思いを伝えました。

鳥取を飛び出し、海外公演を成功させたプロジェクトもあります。鳥の劇場のプロデュースで2013年8月に立ち上がった劇団「じゆう劇場」です。障がいのあるなしにかかわらず、「演じる」ことを通して、表現することの楽しさを実感し、ともに作品をつくり上げる達成感を得ること、そうした活動を通じて障がい者の社会参加の促すことを目的にしています。

ある講演の中で代表の中島諒人さんは、じゆう劇場のプロジェクトにおける鳥の劇場の役割を「共に生きることを実践してみせる場所としての劇場」と表現しています。じゆう劇場では、知的障がいや身体障がいを持つ人と健常者が一緒に演じます。応募で集まった劇団員にとっても、指導する鳥の劇場にとっても、作品づくりは挑戦の連続です。

じゆう劇場の初舞台は、2014年に開かれた「あいサポート・アートとっとりフェスタ」です。クライマックスイベントで「三人姉妹」(A. チェーホフ作)を上演し、観客の盛大な拍手とともに、演劇界にも大きなインパクトを残しました。

2015年の「鳥の演劇祭8」では、W.シェイクスピア原作の「ロミオとジュリエット」をもとに創作されたオリジナル作品「『ロミオとジュリエット』から生まれたもの」を上演し、大反響を呼びます。

翌2016年の「鳥の演劇祭9」では、宮澤賢治の名作「銀河鉄道の夜」を取り上げ、宇宙、星、闇、学校、祈り、祝祭、孤独、いじめ、旅、生と死など、原作のイメージをコラージュし、出演者の体験、想像や願望も織り交ぜながら、生きる不思議、喜びや切なさを描いた作品、「じゆう劇場版『銀河鉄道の夜』」を上演。こうしたじゆう劇場の活動が高く評価され、障がい者の文化芸術国際交流事業「2017ジャパン×ナントプロジェクト」の出演団体に選出されました。

この「ジャパン×ナントプロジェクト」は、文化芸術創造都市として世界的に知られるフランスのナント市で、障がい者が創る最先端の芸術活動をテーマに2017年10月に開催。ダンスや太鼓、神楽といった舞台芸術の演目とならんで、じゆう劇場は「『ロミオとジュリエット』から生まれたもの-2017」を上演しました。障がい者と健常者が共に生きる共生社会の在り方を問いかける作品となり、沸き起こった大きな拍手とともに、フランス公演は大成功を収めました。

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