特集
2018.03.01
地域で求められる演劇ワークショップ
設立当初より、教育や福祉の現場に出向くアウトリーチ活動に力を入れてきた鳥の劇場。拠点である鹿野町周辺の学校に足を運び、表現をテーマにした演劇ワークショップを行うなど、鳥の劇場にしかできない教育活動が高く評価されています。
文部科学省の学習指導要領の中にも、表現する力をはぐくむ、表現力を育成するなど、「表現」の文字が何度も登場します。鳥の劇場は、子どもの教育で育成が強く求められる表現力をいち早くテーマにし、鹿野町周辺の幼稚園や小学校、中学校、高校に出向いて演劇ワークショップを行っています。
演劇人である劇団員たちは、表現のプロフェッショナル。境港市にある美哉幼稚園では、「かちかちやま」を演じて見せ、園児にもどんどん参加してもらいました。子どもが観客として演目を見るのではなく、思いきり身体を動かしながら、表現の主人公になることを目指します。劇団員が目の前で見せる大迫力の演技に園児たちは目を奪われ、引き込まれていくのだそうです。
鳥取市立逢坂小学校では、2007年から鳥の劇場が学習発表会で演じる舞台作品の創作指導を行っています。地域の昔話や伝説をもとに、台本づくりから演出、音楽演奏、美術制作、演技までを全校生徒とともに完成させ、作品を発表しています。
2017年7月の3日間、鹿野町の小・中学校で行われたのは、演劇ワークショッププロジェクト「トリジュク」です。両校は2018年4月に開校する小中一貫の義務教育学校「鹿野学園」に生まれ変わります。開校に伴って新設される学科「表鷲科(あらわしか)」には、表現力や生きる力を付けるの狙いがあり、トリジュクは、その準備の一環でもあります。「演劇を通じて表現力を高め、たくましく生きていける力をつける!」をテーマに、青山学院大学と鳥の劇場が協力して実施されました。
いつもは昼食をとるランチルームに中学1年生全員が集まり、動きやすいように靴を脱ぎ、劇団員の指示で歩いたり止まったりと、生徒たちは嬉々として動き回り、エネルギーを発散させながら、表現活動を心から楽しんでいました。
これ以外にも、鳥の劇場が取り組んでいるアウトリーチ活動の一つに「小鳥の学校」があります。“創る子ども、考える子どもを育てる週末の学校”として2010年度から毎年開校しているもので、公募で集まった小学5年生~中学3年生の受講生が週末に授業を重ね、3月末の発表公演を目指します。
ある年には「人魚姫」の上演を目標に、演技だけでなく、舞台美術や小道具の制作、劇中音楽の作曲・歌唱、宣伝チラシの作成もすべて学びとして、子どもたちと一緒に進められました。近年では、演目の選定や台本作りも自分たちで行なっています。
劇場のスタッフだけでなく、第一線で活躍するアーティストや研究者を講師に招いて多彩な授業が行われ、子どもたちは、演劇作品創りを通して創造力や自ら考える力を身につけていきます。
未来を担う若者の人材育成が求められるのは、舞台芸術の世界も同じです。鳥の劇場が「つくる高校生」と題して行う「高校演劇もっと盛り上げ事業」も、演劇の未来につながっているといえるでしょう。このプログラムは演劇に関心のある高校生が対象で、参加費は無料。演劇部在籍などの条件もありません。 目標は、高校生が自分たちの力で演劇を構想し、創作する力を持つこと。鳥の劇場を会場にプロの演劇人と稽古を行い、鳥の演劇祭などで作品を上演します。
幼稚園児から高校生までを対象としたこれらのプログラムは、子どもたちが演劇に触れる機会を増やし、鳥の劇場の活動のみならず、舞台芸術の素晴らしさを伝える大切な役割を果たしています。