稽古場レポート『戦争で死ねなかったお父さんのために』
稽古場レポート『戦争で死ねなかったお父さんのために』
今回の稽古場レポートはライブ配信担当のスタッフがお送りします。
皆さん、こんにちは。三輪と申します。2月公演『戦争で死ねなかったお父さんのために』の演出助手とライブ配信を担当しております。
稽古は1月からスタートし、丁寧な読み合わせがまず行われました。2015年に同じ戯曲を上演しておりますので、今回は再演になります。とはいえ、キャストも変わっておりますし、時代もまた変わっております。読み合わせは、台詞の確認だけでなく、作者であるつかこうへい(執筆当時まだ大学生!)が戯曲を書いた1970年代がどんな時代だったか−世間ではなにが流行っていたのか、当時の大学はどんな雰囲気だったのか−を話し合ったり、おちゃらけた調子の、膨大な台詞の大波による展開のなかで、何が取引され、何が明らかになり、どんな苦悩や葛藤が人物に秘められているのか、を探ったりしました。
鳥の劇場の上演は、つかの戯曲をそのままにやるわけではありません。脚色しています。どんな脚色かというと、「つかの戯曲を70年代の大学生たちが演じようとする」という設定の追加です。これによって70年代の時代の空気を丸ごと舞台上に持ってきたい。でもこれは、俳優たちにとっては、ハードルが一つ上がることになります。ただつかの戯曲に没入して演じればいいのではなく、『戦争』を初めて演じようとする大学生の視点を同時に持ち続けねばならない、ということですから。「つかの戯曲のなかの人物」と「70年代の学生」と。熱量100%を必要とするつかの言葉を発しながら、次の瞬間には、それを吟味している学生に戻る。この距離をなんとか演じようと俳優たちは努力を続けています。
戯曲が初めて書かれた1971年から数えて、今年は50年目。戦争が終わってから、76年目。つかが当時捉えようとした「戦争」の感覚を捉えようとすることそのものが、50年後の今の私たちにはすでにチャレンジです。つかの戯曲を通して見えてくる、70年代の若者たちの「戦争」。ここから、76年以上前の戦争を、そして戦後を、今の現実の地続きとして捉え直してみたい、と考えています。
どうか皆さま、一度劇場に足をお運びくださり、ご高覧の上、ご批評くださいませ!
今回は鳥の劇場初の自力でのライブ配信に挑戦します。その担当が機械音痴の私、というのには、まったく冷や汗たらたらであるのですが…どうかうまくいきますように!
三輪