年間プログラム

2022年度の活動に向けて

鳥の劇場2022年度活動テーマ

ー 熱をわかちあい、熱をつくろう。さらに新しい劇場のあり方へ。 ー

 

新型コロナ感染の常態化、そしてロシアによるウクライナへの軍事侵攻という状況の中、新しい季節がやってきました。

昨年度、当劇場は資金調達の失敗により例年とは少し異なる形で事業を行い、例年なら新作公演をする2月から3月にかけて、活動開始15周年ということで鳥取県内全域13会場で親子で楽しめるお芝居『どろぼうがっこう』を上演しました。その折に考えたことがありました。

 

まずは来場者数のこと。15年の活動を通じて、多くの方にずいぶん知ってもらえるようになったと感じています。けれど、一方でもっと来場者を増やしたい、増やさなければいけないという危機感もあります。経営的な意味も含めてです。

それで各会場にご来場のみなさんに鳥の劇場への来場経験の有無を聞いてみました。どの会場でも半数に届きませんでした。「なるほど、確かにまだまだだ」と思いました。けれど同時に、「まだまだだが、まだまだ行ける」とも。『どろぼうがっこう』公演に来てくれるのですから、演劇には興味があるみなさんです。この人たちに劇場まで来てもらうことができれば、もっともっと劇場の活動が豊かになるのです。

 

それからもう一つ、新型コロナの感染拡大の中で感じるのは、劇場でいろいろな人と肩を並べて芝居を見ることの価値が高まっているということです。『どろぼうがっこう』は漫画のような芝居で、いつも観客席に笑い声が満ちます。けれど、今回の巡回ではそれが少し少なく感じました。観客席は満席の半数を定員としていて、一席ずつ空けて着席してもらうことを基本としました。それでお客さんの笑いが伝染しづらいのです。

演劇のいいところは、知らない人とも肩を並べて、無意識に観客同士が影響し合いながら芝居を楽しむことです。コロナによりその劇場の力が奪われることで、観客席がもつ価値をあらためて認識しています。

現代はネットを通じて映像をはじめいろいろなメディアを一人で楽しむ時代になりました。それはそれでいいところもたくさんありますが、一方で、社会的な孤立や分断が進む中で、他者とつながる機会、他者に寄り添う力、寄り添われる力が求められるようになっています。他者とは知らない人です。劇場は知らない人とも共感によりゆるやかにつながることのできる場です。

 

今年度は、さらに多くの新しい観客のみなさんと出会うこと、劇場で提供する体験をさらに深めることを目指します。ぜひ応援してください。

 

(鳥の劇場芸術監督 中島諒人)

 

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