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伴走支援作品を決定しました 最終選考に向けて
プロの戯曲作家のサポートで、
あなたの作品がもっと輝く!
いわゆる「障がい」といわゆる「健常」の間の壁を戯曲創作によって壊したいというのがこのコンテストの目的です。いろいろな事情で演劇創作に参加することが難しい人もたくさんいらっしゃると思います。けれど、技術の発達の中で文字を書くということならかなりハードルが下がるはずです。想像力の世界では、私たちはみな等しく自由なのですから。
本コンテストは昨年第一回を開催し、224作品の短編戯曲の応募がありました。想像をはるかに超える数でした。私は全作品を読みましたが、聞いてほしい!という叫びのような切実さを多くの作品から感じました。コンテストをやって良かったと思いました。アメリカ、ニューヨーク州のクイーンズシアターとの協力のもと、クイーンズシアターが実施した全米での戯曲公募と基本的に同じ公募条件での実施だったのですが、アメリカでの応募数は160程度だったので、数の多さは本当に喜びでした。しかし同時に、それだけ日本では抑圧された声が多いということかと考えさせられもしました。蓋をする、見ない、聞かない、ないことにする、黙ってしまう、隠れてしまう。日本社会のよくないところです。もっと自由に声をあげよう、姿を現そう、その機会としてこのコンテストを使ってもらいたい。
全部の作品を読んで、もったいないと感じたところもありました。戯曲の書き方を知らない人が多い。戯曲は舞台での上演を前提としています。テレビや映画の台本とは違うのです。何が一番違うかというと、映像では風景や物を映すことで、それを一つの言葉として使うことができるのに対し、演劇では(とりわけ序盤は)もっと言葉を中心として世界を作っていくことになります。だから短い場面を重ねていくというのは有効ではなく、特に今回のような短編では一つの場で展開させた方が世界がしっかり描けます。
題材はいいのに、作品としては成功していない。この問題を解決するために、今年は伴走支援という方法でコンテストを進めます。応募作品をある程度下選考した上で、三人の劇作家に読んでもらいます。そして「この作品を支援したい」という作品を各人三作ずつ選んでもらい、作者への助言、改訂、それへの助言、さらなる改訂の過程を経て出来上がった作品を最終選考の候補作とし、9作品の中から最優秀作等受賞作を選考します。
昨年の応募作を踏まえてもう一つ。もっと自由でいいんじゃないか。「障がい」や「日常」に縛られすぎ。審査員からそんな意見もありました。想像力は自由なのです。障がいのある人がお書きのものにはなんの制約もありません。障がいがない人の応募も、障がい者が登場するということだけが条件です(これは障がいのある俳優の演劇活動への参加を促進するためでもあります)。日常を描いた作品も歓迎ですし、日常をはるかに超えた自由な創作の応募にも期待します。
鳥の劇場芸術監督 中島諒人