ジル・ジョバンは、黒鳥(black swan)のイメージを哲学者カール・ポパーから得ている。それは、我々の現実認知が極端に不安定なものになっていることを象徴している。「心をかき乱すような不思議さ」を取り入れることにより、彼は我々のまなざしや習慣に変化をもたらそうとする。驚きを感じること、試みることをやめない子どもの世界に飛び込むよう促す。「Black Swan」は、言語から解き放たれた振付による記述が試みられている。そしてその試みが、我々をこの作品に引きつける。我々が感じるのは動きそのものであり、その動きが生み出す「ありえない物事」(the improbable)である。
プログラムディレクターより
ジル・ジョバンさんは、スイスのジュネーブを拠点に活動するヨーロッパの先駆的な振付家です。彼のダンスカンパニーに所属するダンサーとの出会いがきっかけで、この作品を知りました。体の使い方、呼吸の感覚に東洋的なところがあってもおもしろいし、小道具でつくられる視覚的なイメージがとても奇妙で引きつけられました。ヨーロッパのダンスシーンの現在をご覧ください。
ジル・ジョバン
ジル・ジョバンは、1997年に3人のダンサーとともに製作した初振付作品「A+B=X」以来、国際的にその名を知られている。彼のラディカルな作品は専門家からも観客からも高い評価を受け、世界の中で最も創造的な振付家の一人に数えられるようになった。彼は自らのカンパニー設立以来、25カ国以上で上演を行い、インディペンデントに活動するスイスのアーティストたちの代表的存在となっている。
●各回上演後にアフタートークがあります
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