アメリカがイラクへの空爆を開始した、2003年3月20日前後の東京が舞台。六本木のライブハウスで出会った男女が、そのまま渋谷のラブホテルへ行き、そこで5日間を過ごす。2人は、その5日間の間に戦争が終わっていればいいと夢想しながら、性行為に耽る。5日目の朝、ホテルを出て、もう会わないと約束して別れたとき、戦争はまだ終わっていなかった。要約すればそれだけの物語を、複雑な語りの構造と演じる主体の移行など独特の手法で伝える。その表現手法の斬新さと現代の東京に生きる等身大の感覚を鮮明に描いたことで、国内外問わず大絶賛を受けたチェルフィッチュ・岡田利規の代表作。
プログラムディレクターより
作家で演出家の岡田利規さんは、だらだらした体、言葉をコントロールするという不思議な作業をする人です。現代人の精神、言葉、体のありようを見つめた成果として舞台があり、その仕事はヨーロッパでも注目されています。今回の「三月の5日間」は、チェルフィッチュの初期代表作です。シュールでおもしろく、少し切ない不思議な作品です。
チェルフィッチュ
岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。チェルフィッチュとは、自分本位という意味の英単語セルフィッシュ(selfish)が、明晰に発語されぬまま幼児語化した造語。『三月の5日間』(2005年第49回岸田國士戯曲賞受賞)などを経て、日常的所作を誇張しているような/していないようなだらだらとしてノイジーな身体性を持つようになる。ダンスや美術の領域からも高く注目され、現在ではアジア、欧州、北米にて海外招聘多数。2010年は、あいちトリエンナーレ2010での新作発表を控え国内外10都市でのツアーを行うなど、多方面で精力的に活動している。
●各回上演後にアフタートークがあります
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