本年開催にあたって
長く続いたコロナ禍は、人と人の交流に大きな影を落とし続け、経済の停滞は経済的格差拡大を加速させた。従来より進行していた地方都市の衰退は、コロナによりさらに深刻化しているように思える。鳥の演劇祭は、開始当初から演劇による地方の活性化を大きな目標としてきた。それはイベントによる一過性のにぎわいをつくるということではない。演劇芸術と生活者の出会い、国内外の演劇人と生活者の出会いなどを通じて、グローバル化した現代社会の希望と課題を見つめるための試みであった。「出会い・思考・行動」の営みとして、演劇の熱により活性化した人と人のつながりが、ここだけの未来を獲得していくことを目指す継続であった。鳥の演劇祭は今年15回目を迎える。さまざまな困難を乗り越える飛躍への強い決意を込めて、開催テーマを「とべ!」とし、週ごとに「暴力」「障がい」「表現」など個別テーマを定め、演劇、美術展、ワークショップ、講演などを通じて、世界を覆う閉塞の向こうを見通し、新しい実践のきっかけとなることを目指したい。
鳥の演劇祭芸術監督 中島諒人