「源氏物語」をもとに描かれた能の謡曲『葵上』を、三島由紀夫が現代人の抱える内面の苦しみを主題として耽美な世界に昇華したのが近代能楽集『葵上』です。鳥の劇場の中島諒人が演出した本作は、昨年中国とフランスで上演し各国で好評を博しました。今年の上演では、オペラ、ドラマ、映画など多岐にわたり作曲を手掛けている千住明氏が楽曲をかきおろし、劇世界に新たな色を加えます。今年10月に石川県立音楽堂にてオーケストラの生演奏で上演する予定です。

物語

都会の病院の一室。原因不明の病に倒れた若い妻・葵のもとに、夫・光が出張から急きょ戻る。看護婦によれば、この病院は、睡眠療法によって患者の性的コンプレックスを解消することで、あらゆる精神の病に対処するらしい。光のかつての年上の恋人・六条康子が音もなく訪れる。