© 水本俊也
© 水本俊也
靴ミガキをしている門番、欠勤中の公務員、自由を愛する松葉杖の女。三人が織りなす、ユーモラスで不可解な別役実ワールド。不条理劇を日本で確立した作家が、カフカの短編『掟の門』に想を得て書いた初期作品。若手演出家・伊藤全記を中心に、山口真由と鳥の劇場の中川玲奈・後藤詩織がどんなアンサンブルを見せるか。
ある街の巨大なビルの裏手。ある「証拠」を探しつづける公務員が、靴ミガキをしている門番に出会う。初めて出会った仲ではあるが、「本当のこと」を打ち明けあおうと、話しはじめるふたり。その会話の果てに、誰にも気づかれない、些細な、そして大きな事件が起こる。
作:別役実
演出:伊藤全記
出演:後藤詩織(鳥の劇場) 中川玲奈(鳥の劇場) 山口真由(7度)
音響:金子翔一(DISCOLOR Company)
照明:安達直美
衣装:南野詩恵(お寿司)
「門」は、日本が高度経済成長期にあった、1966年に書かれた作品です。
終戦から20年、都市化が進み、人々の生活が大きく変化する中、わたしたちのからだや、「生きる」ということの実感が薄れていくような不安と孤独が、そこには描かれています。作者の別役実は、戯曲だけでなく童話にも力を入れていて、漠然とした淋しさのにじむ物語を、たくさん書き遺しています。「門」から半世紀以上がたった今、日本は高度情報化社会へと歩を進め、社会は再び、大きく変わりつつあります。この変化の中でわたしたちは何を喪いつつあるのでしょうか。そしてそれを、取り戻すことはできるのでしょうか。
伊藤全記
成城大学文芸学部芸術学科卒業。2014 年に 7 度を結成、演出家として活動を開始。 東京・千葉を 中心に、劇場だけでなく梨園や神社境内など、さまざまな空間で上演を行う。近年は、「dim voices」 をテーマに掲げたシリーズを創作。 2021 年、豊岡演劇人コンクールにて一人芝居「胎内」を上演、 優秀演出家賞を受賞した。2022年、鳥の劇場プロデュース作品、リクリエーション版『胎内』を富山県利賀村と鳥の演劇祭15にて上演。
令和5年度日本博2.0事業(委託型)
主催:公益財団法人利賀文化会議 独立行政法人日本芸術文化振興会 文化庁
共催:特定非営利活動法人鳥の劇場