今回ワークショップで扱う作家、別役実さんは、日本語での不条理演劇を確立した、日本を代表する劇作家です。不条理演劇とは、簡単に説明しますと、つじつまが合わなかったり、理屈に合わないことで、見えないものに振り回されていく人々の姿を描いたりして、人間の奥底にある本質をあぶり出していく奇妙な演劇と言えるのではないかと思います。
別役さんの作品もやはり不思議で、なにより人間の寂しや孤独をポツンと浮かび上がらせています。
別役作品の特徴の一つに、見ず知らずの他人同士が、たまたま道で出会い、挨拶を交わすことから、物語がはじまるということがよくあります。そして、その挨拶から始まった会話は、思いもよらない結末になったりします。
今回のワークショップは、別役実の作品の特徴である、他人と他人が出会うことで、どんなことが起こるのか、という点に注目していきます。別役さんにとって、「出会う」とはどんなことだったのか、そんなことを考えながら、今回、私が演劇祭で演出する『門』や他の別役作品から、いくつか抜粋した箇所をみんなで読みたいと思っています。
挨拶から始まる、コミュニケーションという冒険に、勇気をだして一緒に出てみませんか。
伊藤全記
伊藤全記
成城大学文芸学部芸術学科卒業。2014年に7度を結成、演出家として活動を開始。 東京・千葉を 中心に、劇場だけでなく梨園や神社境内など、さまざまな空間で上演を行う。近年は、「dim voices」 をテーマに掲げたシリーズを創作。 2021 年、豊岡演劇人コンクールにて一人芝居「胎内」を上演、 優秀演出家賞を受賞した。2022年、鳥の劇場プロデュース作品、リクリエーション版『胎内』を富山県利賀村と鳥の演劇祭15にて上演。
令和5年度日本博2.0事業(委託型)
主催:公益財団法人利賀文化会議 独立行政法人日本芸術文化振興会 文化庁
共催:特定非営利活動法人鳥の劇場