『アンドロギュノスの憂鬱2019』
The Melancholy of Androgynous 2019
劇団くらっぷ[奈良]
Clap Theater Company
知的障害のある人たちが世界の名作文学に挑戦するのが、くらっぷの特徴。
今回は、プラトンの「饗宴」が下敷き。
The Melancholy of Androgynous 2019
Clap Theater Company
知的障害のある人たちが世界の名作文学に挑戦するのが、くらっぷの特徴。
今回は、プラトンの「饗宴」が下敷き。
The Melancholy of Androgynous 2019
Clap Theater Company
知的障害のある人たちが、世界の名作文学に挑戦するのが、くらっぷの特徴です。今まで挑戦したのは、『羅生門』(芥川龍之介)、『ゴドーを待ちながら』(ベケット)、『掟の門』(カフカ)、『ファウスト』(ゲーテ)など。今回の作品は『饗宴』(プラトン)をヒントにしています。演出家のもりながまことさんと出演者との試行錯誤の過程を通じて、原作に秘められたエッセンスが、思わぬ形で浮かび上がってきます。
構成・演出:もりながまこと
出演:岡本拓郎 木村ゆうり 前田なりみ 八尾ゆきこ 山野将志
物語
人間をつくったゼウス。しかし、男と女が合体した両性具有のような人間は神に反逆するようになり、ある神は人間を憐れんで何とかしようとするが、別のある神は「人間がどうあろうが神には関係ない」と、まったくの無関心。そこでゼウスがあらかじめ用意しておいた2つの解決策が提案される。が、解決したとたんに新たな問題が発生。神々と人間は七転八倒の世界に突入していく…。
古代ギリシャの哲学者プラトンは、我々が実体(本物)であると思い込んでいるものはただの影に過ぎないと、その著作『国家』で書いています。
暗い洞窟の中で手足を縛られ、動くこともできず、洞窟の入口から入ってくる光に照らされた影を私たちは実体と思い込んでいるに過ぎないと。
これはやっかいな比喩です。
医学に喩えると病気の原因もわかって、その病気による体の状態も、この後どうなるかも明確にわかっているのに、治せない。
そして、この“治せない”ということは絶対に変ることのない絶対的な真理だと医者が力強く雄弁に語っているのを数時間も聞かされている感じです。それも途中休憩なしで。
救われません。
といいますか、こんな論理を延々と聞かされると、健康な人でも病気になってしまいます(笑)。
ギリシャ悲劇とかを読んでいると、このことがとても困ります。
ヘコむんですね。気持ちが。
私は、ギリシャ・ローマ哲学というものは人間の持っているありとあらゆる欲望を徹底的に言葉で肯定しようとした論理体系であるように思えてなりません。
時々、「嘘つけ!」と叫びたくなる。
でも、プラトンも、そのことをわかっていたんですね。
だからといって、現代に生きる私たちは、このような哲学的感傷に浸る必要はありません。
私たちが生きているこの社会の世界観が、このような論理の延長線にあるとしたなら、どこかで根本的に軌道修正をしないと取り返しのつかないようになる。
それは、私たちが核廃棄物を処理することが永遠に不可能であるとわかっていながら、核エネルギーに依存し続けているのをやめないようなことと根本的に繋がっているのではないかと、私は思うからです。
私たち劇団くらっぷの『アンドロギュノスの憂鬱』は、この“嘘の言葉”に戦いを挑んだ作品です。
知的ハンディを持つ俳優たちは、この“嘘の言葉”に対してとても強く、勇敢で、果敢に戦いを挑んでくれるのです。
しかし、このように何かしら偉そうに言う、私の言葉も嘘で(笑)、本当は(実体は)、とても楽しく、知的ハンディのある俳優たちは“嘘の言葉”を遊んでくれるのです。
私は、人間の言葉に対するこういう戦い方も、演劇的にはとても有益で、劇的なものなのだと信じています。
そして、私たちのこの視点は、何も新しいものではないと考えています。
それはすでに在って、ただ、たくさんの人がそのことに気付いていないだけで、私たちは、一人でも多くの人が、そのことに気付いて欲しい気持ちでいっぱいなのです。
2018年に開催された第10回奈良演劇祭で、好意的なお言葉をたくさんいただいた作品です。
今回、鳥の演劇祭において、2019年バージョンで、さらに多くの方々に観ていただく機会を得たことを光栄に思います。
劇団くらっぷの演劇的知をご堪能いただければ幸いです。
もりながまこと
2004年結成。舞台に立つ俳優はみな知的障がいを持つ。戯曲に書かれた台詞ではなく、他者や世界の認識について様々な方法を持つ俳優たちが、稽古場で置かれた状況を読み込んで発した台詞で、舞台は構成されている。あらゆるものを無限に内包した演技から現出してくる世界は、人間が生きていく上での多様や可能性、そして劇的ということの意味を、まったく新しい視座から問いかける。
古代ギリシャの哲学者、プラトンの中期対話篇(複数の登場人物間での対話形式をとっている文学作品)の一つ。
悲劇コンクールの祝勝会に会した人々が、ワインの杯を重ねつつ次々にエロス(愛)讃美の演説を試みる。最後に立ったソクラテスが、エロスは肉体の美から精神の美、さらには美そのものへの渇望すなわちフィロソフィア(知恵の愛)にまで高まると説く。
10月
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鹿野町総合福祉センター