鳥の劇場は、これまでも別役実の作品を多く上演し、日本人の言語化しない・されない思いや無意識について考える場を作ってきました。今回は、沖縄の演出家福永武史を起用し、別役初期作品『象』に挑みます。福永氏は、戦争について考えることを演劇活動の根幹に位置付けてきた演出家です。沖縄戦、広島・長崎被爆、敗戦、経済発展という歴史の中、抑圧された人々の思いを浮かび上がらせ、現代社会の不条理な隠蔽や抑圧についても考えます。
原爆で背中に負ったケロイドを晒して、かつて喝采を浴びた病人。かたやその男の甥は自身も被爆者でありながら、息を殺して生きていた、この世に存在しない者として。社会から不在とされた被爆者たちが身を潜める病院を舞台に、静かな狂気が走り出す。
作:別役実
演出:福永武史
出演:中垣直久 村上厚二 山本芳郎(山の手事情社) 三橋麻子 高橋等(鳥の劇場) 大田信之介(鳥の劇場)
舞台美術:中島諒人
照明デザイン:西本彩
音響デザイン:原伸弘(オハラ企画(株))
衣装:KIRI
制作:園田祥子
鳥の演劇祭にお越しの皆さま
気がつけば私の旅のお供のバックパックにはある言葉が入っておりました。
「戦争」と「沖縄」。
このふたつの言葉は私にとって終わることなき宿題です。今回この『象』という作品を通して戦争と向き合う機会を頂いたことに誠に感謝しております。
戦争を考えるということは平和を考えるということ、過去を振り返るということは現在という足もとを見つめるということ、平和を願うということは未来を見つめるということ。
私は戦争に対して無力であります。だけれども…だけれども…無力ながらも叫ぶのです。無力ながらも闘うのです。
ただひたむきに平和を見つめて。
福永武史
1973年大阪府生まれ。幼少期に沖縄県に移住し、大学在学中に俳優活動を始める。2011年沖縄県那覇市に「わが街の小劇場」という20坪あまりの空間を立ち上げ、演出活動を始める。2018年、利賀演劇人コンクールで「弱法師」(三島由紀夫)を上演し、優秀演出家賞を受賞。2020年に「わが街の小劇場」を退き、演劇活動を休止。2023年に再び沖縄にて演劇活動を再開する。
主催:公益財団法人利賀文化会議 独立行政法人日本芸術文化振興会 文化庁
共催:特定非営利活動法人鳥の劇場
日本の現代舞台芸術を世界へ 委託:令和6年度日本博2.0事業(委託型)