2006年の初演以来、みなさんに愛されてきた上演です。「源氏物語」の有名なエピソードを世阿弥が謡曲にし、それを踏まえて三島由紀夫が現代劇としました。三島が加えたのは、フロイトによる人間精神理解。「生霊」を信じた平安時代の人間観と性衝動から人間の無意識を捉えた19世紀の科学は、人間理解という点でどちらも生々しくリアルでした。恋愛感情にどうしようもなく翻弄される男と女の心情を演歌、歌謡曲が彩ります。
都会の病院の一室。原因不明の病に倒れた若い女性・葵のもとに、夫・光が出張から慌てて戻る。看護婦によれば、この病院は、睡眠療法によって患者の性的衝動を解消することで、あらゆる精神の病に対処するという。怪訝に思いつつ妻に寄り添う光のもとに、かつての年上の恋人・六条康子が音もなく現れる。果たせなかった光への思いが彼女を生霊としてここに出現させたのだ。
作:三島由紀夫 演出:中島諒人
出演:齊藤頼陽 高橋等 安田茉耶 田中千尋 阿部一徳
舞台美術:中島諒人
音響:原伸弘
照明:伊中昌宏
およそ20年やり続けている作品。演出も初演からほとんど変わっていません。「源氏物語」の中では、最後に生霊はしずめられるのですが、当然三島由紀夫にはそんな選択肢はありません。じゃあ二人はどこに行ってしまうのか、という問いもありうるのですが、それは野暮というもの。人間精神はある特定の状況下では、エライことになってしまうものなんです、それが不道徳と呼ばれようとなんだろうと、そこに人間精神の可能性があるんです、というのが三島が一貫して主張したことでした。今回も生霊の康子の役は、阿部一徳さんにやってもらいます。どうしても光を我が物としたいという欲望の強さが男性的だと感じて、ずっと男性に演じてもらっています。
中島諒人
主催:特定非営利活動法人鳥の劇場
助成:文化庁文化芸術振興費補助金 劇場・音楽堂等機能強化推進事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業)独立行政法人日本芸術文化振興会 令和8年度 鳥取県 優れた演劇の創造・発信等による芸術振興及び地域活性化事業